安らぎをひとつ飲み込む ラムネの香りが淡く残っている
柔らかな痛みと一緒に 世界の輪郭が少し滲んでいく

消えていく

閉め切った部屋の隅から 僕が居ない華やかな街を見下ろす
曇った窓の外では 早過ぎる時計が今を刻んでいる

覚えている 立ち止まった理由を
解っている 立ち止まっていられないことを

真っ白な霧の中で迷っている
ありふれた日々の意味を探している
今はただ、忘れぬように歌っている
いつかまた出会う春を祈っている

色を失くした世界で

キャンバスがまっさらに戻っていく
音楽がノイズに変わっていく

真っ白な霧の中で迷っている
ありふれた日々の意味を探している
今はただ、忘れぬように歌っている
いつかまた出会う春を祈っている

息が詰まるほどに白い
色を失くした世界で

illustration:月雨あずり。

暗い海をただ泳いでいた 向かう先も不確かなまま
声も問いも消し去れぬまま 糸も鍵も錆びついてゆく

知っていたんだ 光の空を飛ぶ翼など持っていないことを
それでも闇の果てから ひとつ 確かな音が響いた

残響を 掻き消す音
想像を越え 響く音

水面揺らす雨粒ひとつ 海に溶けて皮肉に変わる

手にしたものを 紡いだものを 失くさぬように言の葉に替えて
その青白い星の残響 掻き消すように叫ぼう

知っているんだ この目に映る光がやがて消えてしまうことを
それでも闇の底から ひとつ 確かな音を鳴らそう

残響を 掻き消す音
想像を越え 響く音
境界を越え 繋ぐ音
世界を染め 満ちる音
キャスターの煙を吸いこんで吐き出している
甘い香りが浮かんでいる
ぞんざいな想いを吐き出して吸い込んでいる
小さいささくれが引っかかる

どこかで見たような
どこかで聞いたような
今日が終わっていく
明日が終わっていく

繰り返している

冷めたコーヒーを掻き回して飲み込んでいる
喉に苦さが残っている
隠した言葉を飲み込んで掻き回している
古い瘡蓋が剥がれている

忘れてなんかいないさ
忘れられやしないさ
いつか聞いた声を
その言葉 ひとつを

繰り返している

キャスターの煙を吸いこんで吐き出している
甘い煙が浮かんでいる
くだらない話と僕の笑い方と
君の笑顔を探している

また探している

繰り返している
僕らは今日も忘れるんだ
空の青さも 海の碧さも
吹いた風の冷たさも
吐いた呼吸の その温かさも

そこには消えていく何かがあるから

その目を閉ざそうとも 零れ落ちた色が戻らぬなら
今、その深い虚空に明日を描いて もう二度と忘れぬように

僕らは今日も忘れるんだ
土の匂いも 花の香りも
貴方の手の温もりも
明日を見つめる眼の輝きも

過ぎた時間に声は届かない

その手を使おうとも 失くしたあの色で描けぬなら
今、目に映る景色を焼き付けて もう二度と忘れぬように

その眼の光も 付けた足跡も
いつかは消えていく ならば今描こう

その目を閉ざそうとも 零れ落ちた色が戻らぬなら
今その深い虚空に明日を描いて もう二度と忘れぬように
笑い方を忘れた笑顔 歪む
歌い方を忘れた声 割れる

偽物の光に 目が眩んだ羊は
狼の皮を着て 叫ぶ

僕は耳を塞ぐ

さよなら もう忘れよう 言葉を
さよなら あの いつか見た光

羽ばたく空を失くした鳥 墜ちる
触れる先を失くした指 冷える

煽てるだけの声に 嘘を知らない道化は
誰も観ないステージの上 おどける

僕は瞼閉ざす

さよなら ただ消えよう 静かに
さよなら 闇に呑まれた世界
包囲網掻い潜り 飛び乗った京阪線
観覧車過ぎても 不安はそのまま

真っ赤な鉄橋 越えたらそこはもう
過去、今、未来を刻みつける街

進もうか 戻ろうか どこかで間違えたか
迷いも躊躇いも せせらぎに流せばいい

梅田へは川の向こう あずき色の電車に乗って
でも僕は戻らない このままひとつ先まで

土下座像 高瀬川 明治屋を過ぎて
楽器屋のあの角を 左に曲がって

人混みに紛れよう

気付けば戻っていた マルイの交差点
そのまま 川も越えてゆこう

逃げ込んだその先は 花見小路 袋小路
立ち止まる暇はない 今はただ進むだけ

梅田へは川の向こう あずき色の電車に乗って
でも僕は戻らない このままずっと先まで
揺らいだ天秤の上 過ちを重ねるほど
傾く足元へと 落ちていく 音の羽

消えはしないんだ 消せはしないんだ
それでもそっと 待っているんだ

悲しみに満ちた夜空を揺らして
君の声は届く 鮮やかな色を連れて

紡いだ言葉さえも いつかは消えていくなら
祈ったそのひとつを抱えて 目を閉じるよ

音はいつか絶えてしまうんだ
光はいつか消えてしまうんだ

ならば音を ならば光を
この一瞬に解き放つんだ

闇に満たされた夜空の果てから
その光は射した ささやかに 導くように

illustration:せん

月が墜ちて 星は眠り 影も消えた
深い闇に その眼には何も映らない

呼吸さえも止まりそうな静寂の中
ほんの微かに でも確かに
鼓動がひとつ 響きだした

目を開いて
その虚空に手を伸ばす意味を付けたなら
この夜は明ける

開いた空から 今、強く 風が吹いた
未来を繋いだこの一瞬を 刻むように
毀れた声でも 響くだろう 届くだろう
悲しみを切り裂いて 吹き荒ぶ風のように

叫べ!

忘れていただろう? その足で進むことを
覚えているだろう? 次の一歩を踏み出す方法を

僕らなら行けるだろう その先へ

生まれた言葉が 今、ひとつ 溢れ出した
未来の光が この世界を照らすように

強く

失くしたメロディーにその頬を濡らしても
願うなら掴むだろう 未来を

開いた空から 今、強く 風が吹いた
未来を繋いだこの一瞬を 刻むように
毀れた声でも 響くだろう 届くだろう
悲しみを切り裂いて 吹き荒ぶ風のように

叫べ!
強く叫べ!
浮かぶ音も 揺れる想いも
また零れる この手から

すぐそこに 遠く遥かに
触れられない 滲む灯り

この眼に映せはしないんだ
この手に掴めはしないんだ
それでもただ願っているんだ

光を…
光が 君に射すように
notes are falling
thoughts are fading
there is no harm
but is it pleasant?

there is a dim light
that is what i want
i can't reach there
like a asymptote

now i start to end this blind night
but i know i can't see the bright light
still i want to end this blind night

cause i want...
cause i want to show you the bright light
なんでも測れるモノサシで 世界の広さは測れるの?
なんでも奏でるその指で 鳴らした音は誰のため?

尖った音にはその耳を塞ぐの?
闇には怯えて その瞼閉ざしてしまうの?
誰かが決めた正解が正しいの?
あなたが知ってる全てが世界のすべてなの?

なんでも描けるその筆で 人の気持ちは描けるの?
なんでも歌えるその声で 歌う言葉は誰のもの?

世界の広さを私に教えてよ?
その音で私の心を揺らしてよ?
その色繋いであなたの気持ちを教えてよ?
その声嗄らして私の名前を叫んでよ?

尖った音にはその耳を塞ぐの?
闇には怯えて その瞼閉ざしてしまうの?
誰かが決めた正解が正しいの?
あなたが知ってる全てが世界のすべてなの?
暮れていく
今日という奇跡を繋いでいる
それさえ 忘れかけて

夜空の光に 明日を見た少女は
ただ駆け出す その先 未だ見ぬ夢を探しに

響く足音 絞り出したその声
どんな音にも その意味を付けるよ

その手の中の光を 消さないように 失くさぬように
今、溢れ出す言葉で 名を付けて 忘れぬように

いつかの間違いに 歩みを止めないで
目指した朝に 過ちは全て消えるよ

絶える鐘の音 遠ざかる鈴の音
どんな終わりも 始まりへ繋ぐよ

その眼の中の光が 消えないように 曇らぬように
今、降り注ぐ欠片を 拾い上げ君に送るよ

その手の中の光を 消さないように 失くさぬように
今、溢れ出す言葉で 名を付けて 忘れぬように

失くさないで
忘れないで

  • 絵 : なつたろ
  • おはなし : なつたろ+ニシカワ
誰もが浮かれた街の中 浮かない顔した君がいた
理由は無理矢理訊かないよ でも君には笑顔が似合う

街の灯りは作り物 どこか虚ろな光
だから行くんだ 独りでも 遠く"星降る町"へ

探しに行くよ 汽笛鳴らす汽車に飛び乗り
曇るその眼に きっと 光る星のひとひらを

列車を乗り継ぎやってきた “星降る町”は暗闇の中
いつもは瞬く星たちも 静かに息潜め隠れている

広い川を下っていく 脆く小さな舟で
不気味な塔が聳えて 不安連れ見下ろしている

探しに行くよ 黒い森へ 丘の向こうへ
この闇の中 どこにあるの 星のひとひらは…

見つからないまま 夜が明けていく
帰りの汽車が来る 行かなくちゃ

肩を落とし揺られてる汽車は急ぎ足で
滑り込んでくホームに心配そうな顔の君がいた

「ごめんね、君の笑う顔が見たかったんだよ」
君は手を取り 笑う 少し目尻を濡らして

ここにあったよ 頬を撫でる雫の中に
きらり一粒 優しく光る星のひとひらが
並走 迷走 乗り違えたエスカレーター
飛び降り 転げ落ちて改札口へ
失くしたキップ 何処にやったんだっけ
目の前 乗り換えはすぐなのに

環状線をさ ぐるりぐるり回ってみたって
もう感情線はさ 絡まっていく 解けないよ
東西線でさ 喧騒を避けて逃げたって
この存在感はさ 消せない

もう放っておいて

高架下 ウワベだけのカラスたちが
見渡す 次の獲物は誰にする?
それより 長尾行きはどっちだっけ
忘れた 帰り道を見失う

電車にご注意

京阪線でさ ちょっと行方眩ましたって
その警戒線をさ 破れないよ 逃げられない
地下鉄乗ってさ 掻い潜った気になったって
この閉塞感はさ 耐えられない

早く忘れて

忘れてよ

もう放っておいて

movie : 隆子

どこかで聞いた言葉を繋いで一段上った気分で
見下ろす景色はハリボテだらけのニセモノ

誰かが描いた線をなぞって色を重ねてみたって
絵描きにはなれない
そんなのただの塗り絵さ

教えて?

ねぇ それって楽しいの?
ねぇねぇ 教えてよ?
ねぇ それって楽しいの?
ねぇねぇ 聞こえないよ?

右向け右で左向け左
指された先だけ見てる
足元の花を踏みつけたことにも気付かない

アレは違うコレも違う
ソレは飽きたもういらない
今大好きなソレはいつ捨てる予定なの?

ねぇねぇ 教えて?

ねぇ それって楽しいの?
ねぇねぇ 教えてよ?
ねぇ それって楽しいの?
ねぇねぇ 聞こえないよ?

檻の中でウサギたちがじゃれあってはケンカしてる
それを見てるボクの眼は
キレイなの?汚れてるの?

ねぇ それって楽しいの?
ねぇねぇ 教えてよ?
ねぇ それって楽しいの?
ねぇねぇ…?

…もういいよ!

だいきらいだ!
もうしらない!
  • illustration:月雨あずり。
  • movie : えむめろ
窓に揺れている 残像 消えていく
フラッシュバック 訳が今 見えない

沈んでいく

また外れていく 世界の中で 眩暈がしている 夜の深さに
頼りない糸 手繰り寄せて 駆け出すんだ 夢に溺れる前に

不確かな僕の未来なら 途切れても構わない
その声が呼ぶ方へ
願っているんだ そっと 祈っているんだ
君と見た この先に光る明日を

鼓動に掻き消された言葉 滲んでいく
まだ届かない もう戻れない

掻き鳴らす意図と刻んだリズムが 今、響いて 背中を押している

君が揺らしている世界線の その訳を教えて
崩れてしまうから
振り返って また 繰り返して
間違いを裏返す術を探す

また外れていく 世界の中で 眩暈がしている 夜に溺れて
手繰り寄せる糸 千切れてもいいさ
手を伸ばして掴むよ その光を

君が揺らしている世界線の その訳を教えて
崩れてしまうから
繋いでいたんだ ずっと 触れていたんだ
全ての答えと君のその手に

不確かな僕の未来なら 途切れても構わない
その声が呼ぶ方へ
願っているんだ そっと 祈っているんだ
君と見た この先に光る明日を
月明かり 閉じた窓 只、響く 鼓動だけ
不意に頬撫でる風 名を呼ぶは揺れる影
雲の陰にそっと光る鍵の欠片集めて
「連れて行って差し上げましょう」
窓開け飛ぶよ

「いざ、往こうか」

手を繋いで居て 夜空高く舞い上がって
見下ろす街は遥か遠く 光瞬いて手招く
「手を繋いで居て、僕の背にはこの羽が有るから」
その姿は闇に溶ける ひらり咲いた揚羽蝶

誰もまだ気付いては居ない もっと遠く迄!

広い世界 目移りする程 星座が誘う
ペガサス座と狼座がさあ御出でとそっと囁く

「手を繋いで居て、この夜空は余りに広過ぎる。
迷い込めば、次の朝に出合えなくなるから」

手を繋いで居て 夜明け空に舞い上がって
見下ろす街は遥か遠く 光瞬いて手招く
「手を放して、君の背にはその羽が有るから」
その姿は朝日受けて ひらり咲いた揚羽蝶

illustration : なつたろ

月明かり 閉じた窓 只、響く 鼓動だけ
不意に頬撫でる風 名を呼ぶは揺れる影
雲の陰にそっと光る鍵の欠片集めて
「連れて行って差し上げましょう」
窓開け飛ぶよ

「いざ、往こうか」

手を繋いで居て 夜空高く舞い上がって
見下ろす街は遥か遠く 光瞬いて手招く
「手を繋いで居て、僕の背にはこの羽が有るから」
その姿は闇に溶ける ひらり咲いた揚羽蝶

誰もまだ気付いては居ない もっと遠く迄!

広い世界 目移りする程 星座が誘う
ペガサス座と狼座がさあ御出でとそっと囁く

「手を繋いで居て、この夜空は余りに広過ぎる。
迷い込めば、次の朝に出合えなくなるから」

手を繋いで居て 夜明け空に舞い上がって
見下ろす街は遥か遠く 光瞬いて手招く
「手を放して、君の背にはその羽が有るから」
その姿は朝日受けて ひらり咲いた揚羽蝶

photo : rhyth

空はいつか白んで 街が目を覚ます頃
昨日と今日を繋いで 踏み出す 右足から

履き古したブーツと 重いコートを連れて
目指す先はどこかな 知らぬまま歩いてる

眠り損ねた街灯 点滅して
光るワルツ 鳴らすよ 名も知らぬ街角から

ゆらり ゆらり 揺れるよ リズムに合わせて
ふわり ふわり 辿るよ すぐに消えていくあの影
ゆらり ゆらり 落ちていく 粉雪の歌に
ふわり ふわり 重ねるよ 小さな声で

「さよなら」

始発列車の音に掻き消された
ワルツ ここで鳴らすよ 悴んだ指先から

ゆらり ゆらり 揺れるよ リズムに合わせて
ふらり ふらり 辿るよ すぐに消えていくあの影
ゆらり ゆらり 落ちていく 粉雪の歌に
ふわり ふわり 重ねるよ 小さな声で

「さよなら」

illustration : liz

「ハロー、聞こえますか?」
ガラスの向こうから呼ぶ声はやがて静寂に消えていく
いつか聞いた声を忘れてしまった 僕の声もいつか歌うことを忘れた

「ハロー、聞こえますか?」
僕の喉から投げかけた声も砕けて消えていく
この部屋はまるで月にあるみたいに 青白く照らす光だけ漂う

いつか僕のこの声も 届くときが来るのかな

嗄らした声なら届くだろう 風になって
寒さに赤くなる耳のそばでそっと歌うよ
砕けた声なら降り積もるよ 雪になって
君の街 染めるよ 目も眩むほど白く

きっと

illustration : 空斗

photo : rhyth

瞼閉じても見える 今日が更けていく夜
あの日途切れた嘘は 月の光に溶けた

伸ばした細い腕 広げて透かす指先

届かない光 青白い世界
シリウスの影と 街灯を繋いで
紡ぐ合言葉 白い息に変え
欠けた月にさえ 願う 明日も君と

瞼閉じても見える 今日が更けていく夜
淡く照らされた窓 開く時を待っている

伸ばした細い腕 それでも遠い肩先

届かない光 青白い世界
シリウスの影と 街灯を繋いで
紡ぐ合言葉 白い息に変え
欠けた月にさえ 願う 明日も君と
ベルが鳴る6時街灯点って
帰り道辿っている
冷える手は繋ぐ先など失くして
ポケットの中震えている

刺さるような風に声まで凍って
白い息だけ舞い上がる
か細い声で呼ぶ名も忘れて
足を止めて立ち竦む

降り出した雪に昨日を重ねて
思い出 白にリンクする
反響するベルの音に思わず
耳をふさいで目を閉じる

ゆらゆらり 揺れる影さえ見えずに
次の一歩を踏み外す
降り積もる白とかじかむこの手は
溶け出す春を待っている

もう一度

星降る夜空に響かせて
君の足音を辿るから
手繰り寄せるほど遠くなる
雑踏の中に消えてゆく

illustration : 空斗

it's only outside.

you know?

I know.

photo : ひかすけ

  • photo : 木染燕
  • movie : えむめろ
浮かんでいたんだ
揺れていたんだ

ほら

その向こうで
失くしたんだ

また